こんにちは!
元看護師のアクリル画家、松井京丸です。
2匹の愛猫と暮らしながら、癒しと解放をテーマに制作活動をしています。
『見つめる、その先に』© 2026 アクリル・ネコ/松井京丸(アクリル絵の具)
アクリル画を描いた後、筆を洗った水をそのまま流していいのか、迷ったことはありませんか。

本記事では、毎日アクリル絵の具を扱うプロの画家としての知見と、
元看護師ならではの実験的・科学的な視点も踏まえて、
アクリル絵の具の成分と環境面の論点、顔料の毒性の考え方、チューブ表示の読み方、環境に配慮した絵の具の選び方と捨て方までをまとめました。
最後には、今日から動ける対策5つとチェックリストも用意しています。
絵を描く楽しさを手放さずに、環境への負担だけを減らしていきましょう。
【結論】アクリル絵の具の環境問題|すぐに取り組めることがある
最初に、この記事の答えを先にお見せします。
環境への負担をゼロにすることはできません。 けれど、工夫次第で減らすことはできます。
アクリル絵の具は「沈殿物は流さず、乾かして、固形で捨てる」が基本
このあと紹介する対策5つはこちらです。
| 対策 | やること | 目的 |
|---|---|---|
| 1 | 紙パレットを使う | 洗い物の発生源をなくす |
| 2 | 筆・ナイフは絵の具を拭き取ってから洗う | 水に入る絵の具を減らす |
| 3 | 洗い水を容器に溜めて沈殿させ、沈殿物を乾かす | 液体を固形物にする |
| 4 | 自治体のルールに従って捨てる(多くは可燃ごみ) | 流さずに処分する |
| 5 | 重金属系の絵の具は代わりの色を選ぶ | 有害物質を使う量を減らす |
アクリル絵の具を流してはいけないと言われる理由を30秒で
アクリル絵の具は、乾くと水に溶けないプラスチック状の皮膜になります。 この性質が、環境面で懸念される理由の中心です。
懸念点は大きく3つあります。
- 水生生物への影響(成分によって毒性評価が異なります)
- 細かな樹脂片が環境中に残る可能性(マイクロプラスチックの懸念)
- 乾いた絵の具が固まって排水管が詰まるリスク
ただし、家庭の排水から実際にどれだけ環境中へ出ているのかを示した定量データは、確認できていません。 「確実に環境破壊を起こしている」とまでは断定できません。

このあとの章の読み方(行動だけ知りたい人向けの近道)
行動プランだけ先に知りたい方は、【実践】の章(今日からできる対策5つとチェックリスト)へ進んでください。
各章で得られるものは、次のとおりです。
- 【懸念点】の章:何が問題なのかが整理できます
- 【顔料について】の章:色ごとに安全性が違う理由がわかります
- 【安全表示】の章:裏面のマークを自分で読めるようになります
- 【選択】の章:環境に配慮した絵の具の基準とメーカーの特徴がわかります
- 【知識】の章:固形で捨てるほうがよい根拠と、わかっていない部分が整理できます
【懸念点】アクリル絵の具は環境に悪い?中身から見える環境問題の正体
アクリル絵の具が何でできているかを知ると、何が問題なのかが見えてきます。
この章では、成分の中でも「乾くとどうなるか」に絞って整理します。
アクリル絵の具の基本構成(顔料・アクリル樹脂・添加剤)
アクリル絵の具は、主に4つの要素でできています。
| 成分 | 役割 | 環境面での論点 |
|---|---|---|
| 顔料 | 色をつける粉 | 色によっては重金属を含む |
| アクリル樹脂 | 顔料を紙やキャンバスに固定する「のり」 | 乾くと水に溶けない皮膜になる |
| 水分 | 扱いやすい状態に保つ | 乾くと蒸発する |
| 添加剤(保存剤・分散剤など) | 保存性や使い心地を整える | 種類・量はメーカー非公開が多い |
(1)アクリル絵の具をチューブから出した状態の模式図。
(2)水分が蒸発していき、乾燥が進みます。
(3)完全に乾燥するとアクリル樹脂と顔料が固まって、耐水性のある塗膜を作ります。
乾くとプラスチックの膜になる|水彩や油絵具との環境面の違い
画材によって、環境面での論点は違います。
| 画材 | 固める成分 | 環境面での主な論点 |
|---|---|---|
| 水彩絵の具 | アラビアゴム(植物由来) | 顔料の種類 |
| 油絵具 | 乾性油 | 溶剤(テレピン・ペトロールなど)の扱い |
| アクリル絵の具 | アクリル樹脂 | 樹脂そのものと顔料の扱い |
水彩は「顔料」、油絵具は「溶剤」が論点になりやすい画材です。
アクリルは水で洗えるため手軽ですが、乾くと樹脂の皮膜として残る点を意識しておく必要があります。
水生生物への影響とマイクロプラスチックの懸念|わかっていること・わかっていないこと
わかっていることと、わかっていないことを分けて整理します。
わかっていること
- アクリル樹脂の原料(アクリル酸エステルなど)には、成分ごとに水生生物への毒性評価が異なるものがある
- 乾いた樹脂は、自然界ではほとんど分解されない
わかっていないこと
- 家庭の排水から出た絵の具が、環境中にどれだけ流出しているか
- 日本の下水処理場で、どの程度除去されているか
- 公的機関の明確な見解(確認できていません)

【顔料について】毒性を深掘り|色によって安全性が違う
毒性は「アクリル絵の具全体」ではなく、「顔料ごと」に見ていきます。
同じブランドの同じシリーズでも、色によって安全性が違うことがあります。
注意が必要な顔料(カドミウム系・コバルト系・鉛系など)
重金属を含む顔料は、特に注意が必要です。
| 顔料の系統 | 色の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| カドミウム系 | カドミウムレッド、カドミウムイエロー | 色名に「カドミウム」が入る。吸い込み・誤飲に注意 |
| コバルト系 | コバルトブルー、コバルトバイオレット | 粉じんの吸入、誤飲に注意 |
| 鉛系 | シルバーホワイト(鉛白)など | 鉛を含む。誤飲を避ける。アクリル絵の具では一般に流通が少なく、取り扱いの有無は製品ごとに確認が必要 |
同じシリーズの中でも、色によって表示が違うことがあります。
「このブランドは全部安全」と一括りにせず、使う色ごとに確認する習慣をつけましょう。
吸い込む・飲み込む・皮膚に長く付けるの3経路で考える
顔料が体に入る経路は、主に3つです。
| 経路 | 起こりやすい場面 | 対策 |
|---|---|---|
| 吸い込む | スプレー使用、乾いた絵の具を削る・やすりがけする | 換気する。粉じんが出る作業を避ける |
| 飲み込む | 筆を口にくわえる、手を洗わずに飲食する | 制作中は飲食を分ける。筆を口に入れない |
| 皮膚に付く | 長時間、手や腕に付いたまま作業する | 終わったら石けんで洗う。必要なら手袋を使う |
普通に筆で描く範囲では、リスクは大きくありません。
注意したいのは「粉じんが出る作業」と「口に入る機会」です。あわせて、絵の具が皮膚に付いた状態を長時間放置しないことも大切です。

子どもやペットがいる家庭の保管と管理
誤飲を防ぐ基本は、手の届かない場所に置くことです。
- チューブとパレット、洗い水の容器は、使い終わったら棚の上など高い場所へ
- 洗い水を放置しない(動物が水と間違えて飲む可能性があります)
- 絵の具が付いた紙パレットは、そのまま出しっぱなしにしない

我が家には2匹の元気な猫がいますので、絵の具やパレット、描きかけの絵などの置き場所には注意しています。
席を立つときは、猫が登れない場所(高い所で、そこへの足場がないようにした場所)に避難させています。
■↑画材を避難させているスチールラックの上段。
背の高いスチールラック(約180cm)の上段に猫が登れないよう、作業台や他の台から離して設置しました。
中段には絵の具や画材の収納をしていて、こちらにも乗ってほしくないので、収納ケースを前面に置いて乗れないようにしています。
上段は、乾燥させたいパネルを並べて置くこともできて、重宝しています。
「有害表示がある=使えない」ではない
チューブに有害表示があっても、すぐに「使ってはいけない絵の具」になるわけではありません。
ただし、使用範囲と注意事項を守ることが前提です。
前述した、吸い込まない工夫、口に入らない工夫、長時間皮膚に付けない工夫を続けましょう。
【安全表示】チューブ表示の見方と種類をまるごと解説
チューブの裏面には、安全に関する情報が詰まっています。
読み方を知っておくだけで、絵の具選びの精度がぐっと上がります。
まずチューブのどこを見るか(見る場所の順番)
確認する順番は、次のとおりです。
- 色名(「カドミウム」など、注意が必要な顔料名が入っていないか)
- 安全マーク(AP・CLなど)
- シグナルワード(注意・警告・危険)
- 注意文(使用上の注意事項)
なお、表示の有無や位置は製品ごとに異なります。 見当たらない項目は、メーカー公式サイトで確認してください。
「カドミウム」と「コバルト」が入った色名のアクリル絵の具。
米国基準|AP・CLマークの意味
米国の基準(ASTM D-4236)にもとづく表示です。
ASTM D-4236は、画材の慢性的な健康への危険性を表示するための米国の規格で、APやCLといった表記は、この規格に適合した製品に付けられるものです。
| マーク | 意味 | 読み取り方 |
|---|---|---|
| AP(Approved Product) | 毒物学者による評価で、慢性的な健康障害を起こす危険性がないとされた製品に付く | 通常の使用では安全性が確認されている(誤飲しても安全という意味ではありません) |
| CL(Cautionary Labeling) | 使い方次第で障害のおそれがあり、警告文が付く | 警告文を読んで守れば使える |
APマークとCLマークの表示のあるアクリル絵の具。
日本基準|有害性マーク・引火性マーク・シグナルワード(注意・警告・危険)
日本には、画材の安全性を認証する公的な機関がありません。
業界団体が定めた基準に、各メーカーが従って表示しています。
- 有害性マーク:有害な成分を含む場合に表示(「×」のような形で表示される例があります。意味は各メーカーの説明で確認が必要です)
- 引火性マーク:火気に注意が必要な製品に表示
- シグナルワード:危険度が高い方から「危険(重度)」>「警告(中度)」>「注意(軽度)」の順で段階表示
※表示の細かな運用はメーカーごとに異なるため、個別の製品の説明も確認してください。
「×」マークのあるアクリル絵の具。
そのほかの表示|F☆☆☆☆・エコマーク・EN71-3
ほかにも、いくつかの表示があります。
| 表示 | 何を示すか | 保証しないこと |
|---|---|---|
| F☆☆☆☆ | ホルムアルデヒドの放散量が最も少ない等級(建材などで使われる表示) | 顔料の毒性や環境負荷そのもの |
| エコマーク | 環境負荷の低減に配慮した商品に付与される | すべての顔料が無害であること |
| EN71-3 | 欧州の玩具安全規格(重金属の溶出に関する基準) | 排水に流してよいこと |
マークがあるからといって「どんな使い方でも安全」という意味ではありません。
それぞれが保証する範囲を知っておくと、判断を誤りにくくなります。
表示の一覧表(早見表)
| マーク・表示 | 意味 | 子どもに使わせるときの目安 |
|---|---|---|
| AP | 健康障害のおそれなしと評価された | 使いやすい。ただし誤飲には注意 |
| CL | 使い方次第で障害のおそれあり。警告文付き | 大人の管理下で、警告文に従って使う |
| ×(有害性表示) | 有害性の表示 | 使わせない・迷ったらメーカーに確認 |
| 危険・警告・注意 | 危険度の段階表示 | 「危険」は使わせない |
| F☆☆☆☆ | ホルムアルデヒド放散が最少等級 | 判断材料の一つ(顔料の安全性は別) |
| エコマーク | 環境配慮型の認定 | 判断材料の一つ |
| EN71-3 | 玩具の重金属溶出基準 | 判断材料の一つ |
※「使わせるときの目安」は一般的な考え方です。迷ったら、保護者の方がメーカーの情報を確認してください。
同じ絵の具でも「米国基準ではAP、日本基準では有害表示」になる色がある
セレン系・カドミウム系の顔料などで、基準によって表示が食い違う例があるとされています。
一覧表を見て安心するのではなく、使う色ごとにチューブ裏面を確認する習慣を持ちましょう。 迷ったら、メーカーのSDSを見るのが確実です。
SDS(Safety Data Sheet:安全データシート)とは、化学物質やそれを含む製品の「危険有害性」や「安全な取り扱い方法」を詳しくまとめた公式の取扱説明書(データシート)のことです。各画材メーカー(ホルベイン、リキテックス、ターナーなど)が色・製品ごとにSDSを作成・公開しています。
【選択】環境に配慮したアクリル絵の具とおすすめメーカー
環境に配慮するなら、まず選ぶ基準を決めておくと迷いません。
「植物由来樹脂(バイオベース)への置き換え」「リサイクル樹脂の採用」「重金属を使わない代替顔料(カドミウムフリー等)」など、環境配慮型のアクリル絵の具が国内外で登場しています。
選ぶ5つの基準(カドミウムフリー・APマーク・SDS公開・容器素材・廃棄ガイドの有無)
| 基準 | 確認する場所 |
|---|---|
| カドミウムフリーか | 色名・メーカー公式サイト |
| APマークがあるか | チューブ裏面 |
| SDS(安全データシート)を公開しているか | メーカー公式サイト |
| 容器がリサイクルしやすい素材か | メーカー公式サイト・容器の表示 |
| 廃棄方法のガイドがあるか | メーカー公式サイト |
5つすべてを満たすのは難しくても、2〜3個満たす製品を選べば十分に環境に配慮できます。
リキテックス「カドミウムフリー」
リキテックスには、カドミウムを使わずに代替顔料で作られた「カドミウムフリー」の色のシリーズがあります。
- 特徴:発色や隠蔽力を保ちながら、有害性・環境負荷の指摘があるカドミウム顔料を使わずに開発されたシリーズです。
- おすすめポイント:チューブ裏にAP(Approved Product)マークが付いており、室内で制作する方や、ペットのいる環境、排水への負荷が気になる方にも選びやすい絵の具です。
リキテックス「バイオベース」
アクリル樹脂成分の一部を、再生可能な植物由来の成分に置き換えたアクリル絵の具も取り扱っています。
- 特徴:リキテックスが開発した、植物由来のプロフェッショナルグレードのアクリル絵の具です。成分の平均50%にトウモロコシや藻類などのバイオベース(再生可能資源)樹脂を採用し、石油由来成分を大幅に削減しています。(詳細はメーカー公式サイトをご確認ください)
- 使い心地:従来のリキテックス・ヘビーボディと変わらない高い顔料濃度、耐光性、コシ(盛り上げのしやすさ)を維持しているとされています。
- おすすめポイント:プロ仕様の品質を保ちながら環境負荷を減らしたい方に、実用的な選択肢です。
リキテックスでは、安全性や廃棄方法についても公式サイトで案内しています。
アムステルダム「エキスパート」「スタンダード」
リーズナブルでありながら高品質のアムステルダムも、環境保全に取り組んでいます。
- 特徴:製造元のオランダ・ロイヤルターレンス社は、サステナビリティに取り組む企業(B Corp認証取得)です。工場の再生可能エネルギー利用や、チューブ容器への再生素材の採用などを進めています。(対象製品は公式サイトをご確認ください)
- 使い心地:発色・耐光性が高く、日常的にたっぷり使いたいときにも適しています。
ホルベイン「アクリリックシリーズ」
ホルベインのアクリル絵の具には、環境配慮専用のラインはありません。ただし、企業として安全と環境への取り組みを行っています。
(1)「ヒュー(代替色)」のラインナップが豊富
ホルベインのアクリリックカラーには、カドミウム、コバルトなどの重金属顔料の代わりに、有機・合成顔料などで色調を近づけた「ヒュー(Hue)」カラーが充実しています。
例:カドミウムレッドの代わりに「カドミウム レッド ヒュー」を選ぶことで、重金属を含まない絵の具で近い色を使えます。(色味や透明度は元の色と少し異なる場合があります)
(2)F☆☆☆☆の取得
F☆☆☆☆は、ホルムアルデヒドの放散量が最も少ない等級です。
ホルベイン製品の多くがこの登録を取得しており、室内で使うときの空気環境への配慮として、判断材料の一つになります。
(3)SDS(安全データシート)と安全表記の徹底
ホルベインはウェブサイト上で、製品・色ごとのSDS(日本語版)を分かりやすく公開しています。
また、チューブ裏の「ATTENTIONラベル(注意・警告・危険)」やピクトグラムの表記基準を明確にしており、「どの色にどんなリスクがあるか」を作家自身が判断しやすくなっています。
(4)排水対策などの「使い方の啓発」
ホルベインは製品安全ガイドの中で、「パレットや筆を洗う前に、絵の具をしっかり紙や布で拭き取ってから洗うこと」「下水に直接顔料を流さないこと」を呼びかけています。
アクリル樹脂や顔料による水質汚染を防ぐための実践を、公式に案内しているメーカーです。
シックハウス症候群の原因となる化学物質「ホルムアルデヒド」の放散量が最も少ないことを示す、日本の建築基準法・JIS規格の最高等級です。
アーテック「ファースターアクリル絵の具」
アーテックの絵の具は、小・中学生が学校で使うことを前提に企画されているため、カドミウムや鉛、コバルトといった有害な重金属顔料を使っていません。
「ASTM D-4236」などの安全基準をクリアしており、室内で使ったり、手についてしまったりしても安全性が高く、初心者さんやペットのいるご家庭でも使いやすい絵の具です。
「まず手軽に、安全に始めたい」という初心者さんにおすすめです。
ただし、最新の環境配慮型ではなく、中身は一般的なアクリル樹脂(石油系)です。
さらに、専門メーカー(ホルベインやリキテックスなど)の絵の具に比べると、顔料の純度や長期の耐光性(数年〜数十年色褪せない力)は劣ります。本格的な作品販売や長期保存を目的とする場合は、専門家用メーカーが向いています。
アメリカの材料試験協会(ASTM:American Society for Testing and Materials)が定めた、「画材の慢性的な健康被害に対する安全基準および表示ルール」のことです。
描き手が実際に選んでいる基準

主にリキテックスのアクリル絵の具を愛用しています。 最初は、発色の良さや退色の少なさなど、プロ仕様のとても良い絵の具と聞いて使い始めました。
しかし、環境問題について調べていくうちに、安全面への考え方や廃棄方法の提示など、トータルでプロ仕様だと感じ、使い続けています。
【知識】排水に流すより、固形で出すほうがよい理由|エビデンスで整理
「なぜ流さないほうがいいのか」を、根拠つきで整理します。
メーカー公式の見解|水性でも固形で捨てる
リキテックスは、公式ホームページで、安全性と環境への配慮をうながすアドバイスをしています。
- アクリル絵の具用の専用ゴミ箱の設置のすすめ
- 画材はウエスでふき取る
- 絵の具のついた筆を手の上で洗わない
- 排水溝へそのまま流さないようにという警告
「水性だから流して大丈夫」ではなく、「固形にしてから捨てる」が基本という考え方です。
流した場合に起こりうること(環境・下水・排水管)
流した場合に想定される問題は、次のとおりです。
| 場面 | 起こりうること |
|---|---|
| 乾く前に流す | 処理しきれない成分が出る可能性 |
| 管内で乾く・固まる | 排水管に付着して詰まる可能性 |
| 下水処理場に届く | 処理の過程で除去されきらない成分が残る可能性 |
「下水処理場で分解されるから大丈夫」という話を聞くことがあります。 けれど、この考え方を裏づける根拠は確認できていません。
アクリル樹脂は自然界で分解されにくい性質を持つためです。
まだ確実にはわかっていないこと
次の点は、現時点では確認できていません。
- 家庭排水由来の絵の具の環境中流出量
- 日本の下水処理場での除去率
- 公的機関による明示的な見解
だからこそ、断定するのではなく「リスクを下げる行動」として固形での廃棄をおすすめします。
油絵具・溶剤との違い(比較表)
| 項目 | アクリル絵の具 | 油絵具・溶剤 |
|---|---|---|
| 筆洗い | 水で洗える | 溶剤(テレピン等)が必要 |
| 廃液の扱い | 沈殿物を乾かして固形で処分 | 溶剤は自治体によって扱いが異なり、特別な処理が必要な場合がある |
| 自治体のルール | 自治体ごとに異なる(可燃ごみで出せる例が多い) | 自治体によっては別ルール |
アクリルは廃棄のハードルが低い画材です。
だからこそ、基本のルールを守るだけで環境への負担をしっかり減らせます。
【実践】今日からできる対策5つとチェックリスト
ここからは、 今日から実行できる具体的な手順 です。
一つずつ進めれば、特別な道具はほとんど必要ありません。
対策1|パレットは紙パレット一択
パレットは、使い捨ての紙パレットを使いましょう。 アクリル絵の具は乾くと固着するため、再利用するパレットは洗う手間がかかります。
洗うほど、排水に絵の具が流れます。 紙パレットなら、使い終わったら絵の具ごとそのまま廃棄できます。
洗い物の発生源を、そもそも断てるのが最大のメリットです。
| 種類 | 洗う必要 | 排水の量 | 手間 |
|---|---|---|---|
| 紙パレット | 不要 | ほぼゼロ | 少ない |
| プラスチックパレット | 必要 | 多い | 多い |
| 陶器・ガラスの皿 | 必要 | 多い | 多い |
■↑アクリル絵の具使用後のパレットと水入れ(乾燥させて捨てます)
アクリル絵の具を使い始めの頃は、プラスチックのパレットを使っていて、洗うのが大変でした。 洗っても全然落ちないうえに、絵の具をどんどん流すことが不安になり、どうすればいいのか調べました。そこでペーパーパレットにたどり着き、それ以来使い続けています。 洗わなくていいのでとても楽ですし、汚れた水をジャンジャン流す罪悪感もなくなって一石二鳥でした。
対策2|洗う前に拭き取る(筆・ナイフ・容器)
筆やナイフは、水に入れる前にまずペーパーで拭き取ります。
- キッチンペーパーや古布で、筆の絵の具をしっかり拭き取る
- 筆の根元まで、絵の具をできるだけ押し出す
- そのあとで、洗い水の容器で軽くすすぐ
拭き取ったペーパーは、自治体のルールに従って出します(多くは可燃ごみです)。
■↑作業場に用意してあるウエスで、まずは拭き取ります。
対策3|洗い水は2〜3つの容器に分けて、沈殿させて乾かす
洗い水は、容器を2〜3つ用意すると効率的です。
- 1つ目の容器で、汚れを大まかに落とす。
- 2つ目の容器で、仕上げにすすぐ。
- 1つ目の容器は、フタをせず風通しのよい場所に置き、絵の具を沈殿させる。
- 水が透き通るまで待ってから、上澄みの水をペーパータオルなどで濾しながら、少しずつ流す。
- 底に沈殿した絵の具成分は、新聞紙や雑巾などで拭き取って捨てる。
流してよいのは、沈殿物を取り除いた上澄みだけです。濁りが残っているうちは流さないようにしましょう。

【沈殿させた後の上澄み液の捨て方例】
(1)セリアで購入した排水溝カバーを設置しています。
(2)ここへペーパータオルをセットします。
(3)上澄みの水をゆっくりと流します。
対策4|乾いた絵の具は自治体のルールに従って捨てる
乾いて固まった絵の具は、多くの自治体で可燃ごみとして出せます。 ただし、分別ルールは自治体ごとに違います。
確認方法は、次のとおりです。
- お住まいの自治体の公式サイトで「ごみ分別」を検索する
- 自治体の「ごみ分別アプリ」で「絵の具」「アクリル絵の具」を検索する
- 迷ったときは、自治体の清掃担当窓口に電話で問い合わせる

アクリル絵の具そのものの場合は、新聞紙や不要な布に塗りつけてしっかり乾燥(固化)させてから「もえるごみ」に出してください。
絵の具のチューブは、プラスチック製・ラミネート製は「もえるごみ」に出せます(50cm以内のプラスチック製品扱い)。
金属製(アルミなど)の場合は、しっかり中身を絞り出して空にすれば「もえないごみ」として処分します(金属類扱い)。
このように、詳しく回答をいただけました。
※上は、ボクの住む自治体の例です。お住まいの地域では異なる場合があります。
対策5|重金属系の色は代替色を選ぶ
カドミウムなど、重金属を含む色は、できれば使用を制限するか、必要な場面だけに絞って使います。
代替色(HUE表記)を選べば、近い発色を得られる場合も多くあります。ただし、色味や透明度が元の色と少し違うことがあるので、使う前に試し塗りをしておくと安心です。

今日のチェックリスト(保存版)
準備
□ 紙パレットを用意した
□ 拭き取り用のキッチンペーパーを用意した
□ 洗い水用の容器を2〜3つ用意した
制作中
□ 筆は洗う前にペーパーで拭き取った
□ 洗い水は2〜3つの容器に分けて使った
□ 口に筆をくわえたり、制作中に飲食したりしていない
片づけ
□ 紙パレットは、絵の具ごと廃棄用の袋に入れた
□ 洗い水の容器は、風通しのよい場所で乾かし始めた
□ チューブや容器は、手の届かない場所へ片づけた
廃棄
□ 自治体のごみ分別ルールを確認した
□ 乾いて固まったものを、自治体のルールに従って出した
【Q & A】アクリル絵の具の環境問題についてよくある質問

Q:アクリル絵の具は少量なら水で流しても大丈夫?
A:たとえ少量でも、流さないほうがおすすめです。
少量でも乾けば樹脂の皮膜になり、排水管に付着します。
筆を洗う前に、まず拭き取るだけでも流れる量は大きく減らせます。
Q:庭や植木鉢の土に捨ててもいい?
A:おすすめしません。
乾いた樹脂は土の中でも分解されにくく、顔料の種類によっては土壌への影響も懸念されます。
固形にして、自治体のルールに従って捨ててください。
Q:アクリル絵の具で排水管が詰まることはある?
A:詰まる可能性があります。
絵の具は管内で乾くと固まり、付着して層になります。
沈殿物は流さず、乾かして固形で捨てる習慣が予防になります。
Q:アクリル絵の具は子どもやペットがいても使える?
A:使えますが、保管と管理には注意が必要です。
AP表示のある製品を選び、チューブ・パレット・洗い水は手の届かない場所に置いてください。
洗い水を出しっぱなしにしないことも大切です。

Q:百円ショップのアクリル絵の具は安全?
A:表示を確認してから使いましょう。
裏面の成分表示や安全マークの有無を見て、判断してください。
表示が少ない場合は、顔に近づける作業や子どもの使用は避けるのが安心です。
Q:古くなった絵の具はどう捨てる?
A:絵の具が乾燥していない場合は、新聞紙などに絞り出して乾燥してから捨てましょう。
そこから先は、それぞれの自治体のルールにしたがって捨てます。
チューブは、素材によって捨て方が異なります。
これも、自治体によって捨て方が変わるので、確認してから捨てましょう。
【まとめ】アクリル絵の具の環境問題:完璧を目指さず、できることから
この記事のポイントを振り返りましょう。
- アクリル絵の具の問題の中心は「乾くと分解されにくい樹脂になること」と「顔料の種類」
- 毒性は絵の具全体ではなく、色(顔料)ごとにチューブ表示で確認する
- 環境に配慮した絵の具は、カドミウムフリー・APマーク・SDS公開などを基準に選ぶ
- 捨て方の基本は「拭き取る→洗い水を沈殿させる→沈殿物を乾かして固形にし、自治体のルールで出す」
今日からの第一歩は、紙パレットを使うことです。
洗い物の発生源が減るだけで、排水に流れる絵の具は大きく減ります。
完璧を目指す必要はありません。 できることから一つずつ、出す量を減らしていけば十分です。
環境への配慮を続けながら、絵を描く楽しさも続けていきましょう。
絵を描くことで心が解放される、その時間を大切に していただけたら嬉しいです。
ボクは猫を中心に植物や景色を描いていますが、それら全てが自然のものです。 好きな絵を楽しく描き続けるためには、環境問題は避けて通れません。 少しの工夫を重ねていくことは、アクリル画家にとって重要な作業工程の一つだと思います!
松井京丸【作品集】
このブログでは、アクリル絵の具と猫の絵に関することをやさしく簡単に紹介しています。
また、YouTubeではわかりやすく動画でご覧いただけるように工夫しています。
よろしくお願いします!
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結論から言うと、筆洗いの水をそのまま流すのは避けたほうがいいです。
現実的な最適解は 「筆の絵の具は拭き取ってから洗い、洗い水は沈殿物を乾かし、固形物として自治体のルールどおりに出す」 ことです。