
↑『瞬きのあいだ』(アクリル絵の具)
「お気に入りの服に絵の具がついてしまった!」
「気づいたら床にカチカチの汚れが……」
そんな絶望的な瞬間、あなたならどうしますか?
アクリル絵の具は、一度乾いてしまうと水ではびくともしない「最強の耐水性」を持ちますが、実は時間がたっても諦める必要はありません。
この記事では、元看護師であり現在は画家として毎日絵の具に触れている私が、科学的な根拠と現場での経験に基づいた「救済法」を徹底解説します。
この記事を読めば、カチカチになった汚れを最小限のダメージで落とし、大切な衣類や道具を復活させる方法が分かります。
- アクリル絵の具が時間がたつと落ちない科学的な理由
- 家にあるもので「固まった絵の具」を落とす具体的な手順
- 服や床を傷めないための注意点とプロの裏技
- 汚れの予防法から後片付けまで、あとから泣かない工夫
それでは、よろしくお願いします。
時間がたったアクリル絵の具が落ちない理由
アクリル絵の具の特性とは?
アクリル絵の具は、顔料を「アクリル樹脂」という液体で固めたものです。
塗ってすぐの水分を含んでいる状態なら水で簡単に流せますが、水分が蒸発すると樹脂が結合し、透明で強固な「プラスチックの膜」に変化します。
これが「時間がたつと落ちない」最大の理由です。
一度プラスチックになってしまうと、普通の洗剤では太刀打ちできません。

アクリル絵の具は乾くと「プラスチック」に変化する
描いている最中に服についたなら、すぐに流水で洗えば跡形もなく落とせます。
しかし、乾燥が進むと樹脂が繊維の奥にまで入り込み、生地と一体化してしまいます。
時間がたつほど固まる理由
時間の経過とともに樹脂の硬化が進み、酸素と結びついてより強固な結合を作ります。
特に綿などの天然繊維は、繊維の隙間に樹脂が入り込みやすいため、
時間がたてばたつほど「剥離」させるのが難しくなるのです。
絵の具に含まれる樹脂粒子が水に分散している状態のこと。水が蒸発すると粒子同士が密着して、透明なプラスチックの膜(被膜)を作ります。
■↑パレットの上で固まったアクリル絵の具。

■↑かなり本気で洗った後の状態です。乾いてしまうと普通の洗濯では本当に取れません。
洗いすぎて、毛玉が…。

固まったアクリル絵の具を落とす道具と準備
プラスチック化したアクリル絵の具を落とすには、その樹脂を再び「溶かす」または「ふやかす」ための溶剤が必要です。
最強の味方「無水エタノール」
最も効果的なのは「無水エタノール」です。
樹脂の結合を緩める力が強く、揮発性が高いため生地へのダメージも比較的抑えられます。
- 無水エタノール(または除光液)
- 古い歯ブラシ(叩き出し用)
- コットンや古い布(数枚)
- 台所用洗剤(仕上げ用)
代用できる身近なもの(クレンジングオイル・酸素系漂白剤など)
エタノールがない場合、オイル洗顔料や酸素系漂白剤(オキシクリーン等)を併用する方法もあります。
これらは「溶かす」力は弱いものの、樹脂の浮き上がりをサポートする役割を果たします。

専用リムーバーがあると安心
どんなに気を付けていても、夢中になって描いていたら
気が付いたら汚れていた!ということはよくあるもの。
そんなときのために、専用のリムーバーをあらかじめ用意しておくのは賢明です。
●↓ターレンススーパークリーナー:衣服、筆、パレットについた汚れを落とします。
●↓ターナーエコムーバー:筆、パレット、机などについた汚れを落とします。
【服・衣類編】時間がたった絵の具を落とす3ステップ
それでは、実際に固まった絵の具を落としていきましょう。
汚れを広げたり、繊維の奥に押し込んだりしてしまいます。必ず「叩き出す」のが鉄則です。
【手順1】溶剤を浸透させて「膜」を浮かせる
汚れた部分の裏側にタオルをあて、表から無水エタノールをたっぷり含ませたコットンなどでトントンと叩きます。
樹脂が溶け出すまで、1〜2分ほどじっくり浸透させます。
【手順2】汚れを「広げない」ための正しい叩き出し方
汚れが浮いてきたら、綺麗な面を変えながら新しいコットンで叩き出します。
樹脂が柔らかくなっているうちに、下にあてたタオルに汚れを移していくイメージです。
【手順3】仕上げの予備洗いと洗濯のコツ
溶剤で絵の具が薄くなったら、すぐに食器用洗剤をもみ込み、ぬるま湯で予備洗いをします。
最後に通常通り洗濯機へ入れれば完了です。

■↓アクリル絵の具が服についてしまった時の落とし方と予防法を解説しています。
【床・家具編】素材を傷めずに絵の具を落とすコツ
床や家具についた絵の具は、衣類よりも「剥がしやすい」ですが、
無理をすると床のワックスや塗装まで剥げてしまうので注意が必要です。
木製・プラスチック製など素材に合わせた注意点
フローリングの場合は、エタノールを使いすぎるとワックスが白濁します。
傷をつけずに「ふやかす」ための湿布法
カチカチの汚れの上に、エタノールを含ませたキッチンペーパーを置き、その上からラップをして5分ほど置きます。
樹脂が柔らかくなったら、プラスチックのヘラなどで優しく押し出すように剥ぎ取ります。

専用リムーバーを使う
どうしても取れない者には、専用リムーバーを使いましょう。
■↓テーブルに飛んだアクリル絵の具。もう数年はたったもので、あきらめていました。
■↓右下の部分を専用リムーバー(ターナーエコムーバー)で落すことが出来ました!
わかりますか?
右下の部分だけ、キレイになっているのが!
もうずっとアクリル絵の具の白い点々がついているのがデフォルトだったので、
それがなくなって、逆に変な感じです~。
こちらは先ほど紹介した「ターナーエコリムーバー」を使用しました。
【画材編】大切な道具がカチカチになった時の対処法
衣類だけでなく、大切な画材を洗い忘れてカチカチにしてしまった時の救済法です。
筆
一番うっかりしやすいのが「筆」ではないでしょうか。
アクリル絵の具には欠かせない大切な画材ですので、しっかり守っていきましょう。
■↓アクリル絵の具がついたまま乾いてしまった筆。(悲惨)
■↓アルコールに浸した後の状態。かなり洗っても取れなかったのが、ほぼ取れました。
正直、アルコールでここまでキレイになるとは思ってもみませんでした。
これをやって以来、アルコールを常備するようにしています。

■↓アクリル絵の具で筆が固まってしまった時の対処法や予防法について解説しています。
パレット
しばらく、ぬるま湯につけておくと落ちやすくなります。
そこから、洗剤とスポンジで洗います。
でも、アクリル絵の具を使う時はペーパーパレットの使用を強くおすすめします。
使った分だけ捨てればいいだけなので、アクリル絵の具の汚れが落ちないという悩み自体が消えます。
●↓ペーパーパレット
■↓アクリル絵の具のついたパレットの汚れ落としや工夫方法について解説しています。
水入れ
アクリル絵の具は、水で溶いて使うことも多いので「水入れ」も欠かせない相棒ですよね。
ボクの家には猫がいるので、作業が終わったら念のため必ずすぐに洗っています。
それでも、アクリル絵の具はどこかしこに付着していますが、
それはそれで、相棒感が増して、いいのではないかーと思っています。
汚したくない場合は、その都度しっかりと洗剤とスポンジで丸洗いしましょう。
■↑大切な相棒である「筆」「パレット」「水入れ」たち。

【画家が検証】プロが経験した「落ちた素材・ダメだった素材」の境界線
プロの視点から、どうしても落ちないケースとその境界線をお伝えします。
化学繊維(ポリエステルなど)
ポリエステルなどの化学繊維の方が樹脂が浸透しにくいため、落としやすい傾向にあります。
■↓ポリエステル100%の布にアクリル絵の具を着けたものです。
■↓上方の丸の部分のみ除光液をつけて叩きました。汚れが取れています。
天然素材(綿やシルクなど)
逆に、天然の綿やシルクなどは一度固まると完璧に落とすのは非常に困難です。
■↓綿100%の布についたアクリル絵の具。
■↓洗剤で洗って、オキシクリーンで浸け置きして除光液を使っても完全には落ちませんでした。
アクリル絵の具メーカーによる違い
プロも使用するようなリキテックスプライムなどのメーカー品は
乾燥したときに丈夫で劣化しにくいように作られています。
それゆえ、商品にするための画材に適しているのですね。
そのため、安価で売られているものよりも、乾燥してしまうと取れにくいということが言えます。

【準備・片付け】アクリル絵の具で汚れる前に対策
あとで泣かないための、アクリル絵の具で汚してしまわない工夫、
後片付けについて見ていきましょう。
【準備】アクリル絵の具で汚さない工夫
後片付けで泣かないためにも、 予防できるところはあらかじめ対策 しておきましょう。
- 壁にレジャーシートを貼る
- 床に新聞紙を敷く
- 作業台に画板を置く
- 手の届くところにウエットティッシュを置いておく
- 汚れてもいい服に着替える

汚れても交換できる環境を作っておけば、心置きなく制作に没頭できますよ!
【作業中】汚れがあとに残らない工夫
作業中は、絵を描くことに夢中になってしまいますが、せめて筆は守りましょう。
- 手に持っていない筆は水入れにさしておく
- 手に絵の具がついたら、すぐにふき取るか洗う(二次被害防止)
- 筆をたくさん使用したり、水入れの水が全部汚れてきたら、いったん全て洗う。
【作業後】アクリル絵の具の後片付け
自宅でアクリル画を楽しむ上で、注意してほしいのが「片付け」と「捨て方」です。
環境と家の設備を守るために、以下の手順を習慣にしましょう。
アクリル絵の具の「後片付け」
- 拭き取る:パレットや筆に残った絵の具は、洗う前にボロ布やキッチンペーパーで徹底的に拭き取ります。これだけで水の汚れが激減します。
- 洗い水の処理:筆を洗って濁った水は、排水溝に新聞紙や古布を置いて、ろ過するようにして捨てると、固まりが排水溝に流れるのを防げます。市販の「残塗料処理剤」を使うのもスマートです。
- 仕上げ洗い:汚れをほぼ落とした状態の筆を、最後に水道で軽く洗って整えます。

アクリル絵の具の「捨て方」
アクリル絵の具の成分(アクリル樹脂)は、乾くと固形化します。
そのまま大量に排水溝に流すと、配管の中で蓄積して詰まりの原因になる可能性があります。
アクリル絵の具は水に溶ける性質があるので、本来ならば心配はいらないところです。
でも、排水管は、思いがけないトラブルを起こすことがあり得るので対策した方が安心です。
大量のアクリル絵の具の洗い水を排水溝に直接流すと、配管詰まりや環境汚染の原因になる可能性が大きいです。水入れのそこで固まっていた絵の具やナイフについた絵の具がはがれたものなど、注意です。
●↓残塗料処理剤(塗料固形剤)
アクリル絵の具は水溶性なので大丈夫だとは言われていますが、詰まってしまう可能性がある限り、それを防ぐ努力はしたいと思っています。
【Q & A】時間のたったアクリル絵の具の落とし方について

Q:クリーニング屋さんに任せれば確実に落ちる?
A:確実とは言い切れないところがあります。
「アクリル絵の具がついた」とはっきり伝えれば対応してくれる店もありますが、普通のドライクリーニングだけでは落ちないことも多いです。
お店によっても対応が違うことが多いので、相談してみるのが手っ取り早いです。

Q:熱湯を使えばもっと早く落ちる?
A:熱湯は逆効果です。
ぬるま湯は樹脂を少し柔らかくしますが、
熱湯だと生地を傷めたり、逆に樹脂を固着させたりするリスクがあります。
まずはエタノールなどの溶剤を優先しましょう。

Q:手や肌にアクリル絵の具がついて乾いてしまった、どうしたらいい?
A:ぬるま湯と石鹸で優しく洗いましょう。
もし取れにくい場合は、お風呂にはいってふやかしてから洗いましょう。
ゴシゴシこすりすぎると肌をいためるので、優しく洗うのがポイントです。
爪のあいだに入った絵の具は、綿棒にオイルを取ってこするとスルッと取れます。
■↓無印良品のホホバオイル。綿棒に吸わせて、爪のあいだをこすると優しく汚れを落とせます。
【まとめ】アクリル絵の具を落とす確率を上げる「最後の砦」
アクリル絵の具の落とし方について見てきました。
アクリル絵の具を使って絵を描いていく限り、これは永遠のテーマですね。
しかも、時間がたったものはかなりの強敵です。
この記事では、このような内容を解説してきました。
そこで学んだことは、 「事前に汚れないようにする工夫」 と、 「汚れでも、それはそれで良し!絵の具のついた服はアーティストっぽいし!絵の具のついた机はいかにも画家の机って感じでかっこいいよね? というマインド」でした!!
- 絶対にこすらない(叩き出すのが基本!)
- 無水エタノールで樹脂をふやかす
- 専用リムーバーも検討する
- 汚さないようにする「予防」に力をいれる
- どうしてもダメなら、その汚れも「アートの一部」として愛でる!
この記事を読んで、失敗しそうなことは予測して対策できると思います。 それでも何か失敗してしまったら、そこからまた学べばいいだけなので、 気負うことなく、思う存分、楽しんで創作に取り組んでくださいね!
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猫を愛するアクリル画家、松井京丸です。
2匹の愛猫と暮らしながら、癒しをテーマにした絵を描いています。