- ゴッホの魅力と、彼を突き動かした狂気的なまでのエネルギーの正体
- 遺作『ドービニーの庭』に隠された、一匹の「消された黒猫」のミステリー
- アクリル絵の具を使い、「猫の絵」をゴッホ風にドラマチックに描く3つの極意と実践ステップ
こんにちは!
元看護師のアクリル画家、松井京丸です。
2匹の愛猫と暮らしながら、癒しと解放をテーマに制作活動をしています。
↑『瞬きのあいだ』(アクリル絵の具)
「ゴッホって猫の絵を描いていたの?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?
情熱的な筆致で知られるゴッホですが、実はその作品群の中で「猫」が主役として描かれたものは、一点も確認されていません。

本記事では、毎日アクリル絵の具を扱うプロの画家としての知見と、元看護師ならではの実験的・科学的な視点、さらには、猫飼い歴25年の経験も踏めて、
ゴッホと猫の絵のミステリアスな関係から、アクリル画家が教える「ゴッホ風の猫の絵」を描くテクニックまで、詳しく解説します。
この記事を読めば、ゴッホの秘密に一歩近づき、新しい「猫の表現」を手に入れることができます。
キャンバスから溢れ出るようなエネルギーを、猫の絵にも宿らせたら素敵だと思いませんか?
【魅力】「猫の絵」に宿らせたいゴッホの狂気的なまでのエネルギー
ゴッホ(フィンセント・ファン・ゴッホ)は、1853年オランダで生まれました。
ポスト印象派を代表する大変多くの人に愛されている画家です。
ゴッホの魅力は、一言で言えば 「魂の叫びがそのままキャンバスに宿っているような圧倒的なエネルギー」 にあります。
美術史において彼ほど劇的で、人々の心を揺さぶり続ける画家はほかにいないと言っても過言ではありません。
「猫の絵」の話の前に、まずはゴッホの尽きない魅力をいくつかのポイントに分けて紐解いてみます。
印象派の次の時代に現れた、独自の個性を爆発させた画家たちのムーブメント。
ゴッホの魅力1: 感情を伝える「うねる筆跡(タッチ)」と厚塗り
ゴッホの絵の最大の特徴は、躍動感のあるタッチで、キャンバスの上に絵の具を力強く、まるで彫刻のように厚く盛り上げる手法(インパスト)です。
画面に強い立体感とエネルギーを生み出しています。
チューブからひねり出したような油絵の具をうねるように描いた作品は、一目見てゴッホだとわかりますよね。
綺麗に平らに塗るのではなく、筆の動きや感情の勢いがそのまま立体的な線となって残っているため、見る人は ゴッホの呼吸やエネルギーをダイレクトに肌で感じること ができます。
特に後期の作品に見られる、あの独特の 「うねり」 は、見る人の感情をぐっと引き込む力を持っています。
「感情が絵の表面にむき出しで残っている」
だから、エネルギーを感じざるを得ないのですね!

ボクは、ゴッホの激しい筆致に憧れて、一時期はペインティングナイフだけを使って描いていたことがあるんですよ!
ゴッホの魅力2:独自の色彩感覚(黄色と青のコントラスト)
ゴッホの色彩は、現実の景色をそのまま写したものではありません。
彼の心の中にある感情を表現するための色です。
補色の対比などを巧みに用い、目で見た風景をそのまま写すのではなく、自分がどう感じたかという「感情」を色で表現しました。
特に、 南仏アルルのまばゆい太陽にインスパイアされた「黄色」へのこだわりは強烈 です。
『星月夜』や『夜のカフェテラス』に見られる「鮮やかな黄色」と、夜空や闇を表す「深い青」の対比は、お互いの色を引き立て合い、画面から発光しているかのような強烈な印象を与えます。
その2作品の木製カードを仕事部屋に飾っています。
■↑ゴッホ『星月夜』『夜のカフェテラス』木製ポストカード。
美術界だけでなく『医学界』においても、ゴッホがなぜあれほど強烈な黄色を多用したのかが研究されています。 ■↑出典ウィキメディアコモンズ:ゴッホ『ファンゴッホの寝室』 ゴッホは、自分が美しいと思ったもの、愛したものに対して寝食を忘れて没頭しました。 彼が描いたのは、神話の神々や高貴な人々ではなく、路傍に咲くひまわり、履き古された労働者の靴、自分が暮らす質素な部屋、地元の親しい友人たちでした。 「どんなに平凡に見えるものにも、等しく美しい命が宿っている」という彼の温かくも切ない眼差しが、作品の根底に流れています。 観る者に直接伝わるテーマの純粋さがあり、複雑な隠喩や難解な思想ではなく、「ひまわり」や「星月夜」など、自然の美しさや自身の内面がストレートに描かれています。 専門的な知識がなくても、画家の感動や孤独感がそのままダイレクトに伝わってきます。 「私は自分の仕事に命を賭け、そのために半分気が狂った」 ゴッホは弟のテオにたくさんの手紙を送ったことでも有名です。 絵の悩みや孤独、色への興奮、自分の仕事や人生について、様々なことがそこから浮かび上がります。 ■↑出典ウィキメディアコモンズ:ゴッホ『ジャポネズリー:梅の開花(広重を模して)』 ■↑出典ウィキメディアコモンズ:歌川広重『名所江戸百景 亀戸梅屋舗』 ゴッホは浮世絵に強く惹かれ、ギャラリーに足しげく通い研究を重ねていました。 400点以上もの浮世絵を収集して、展覧会まで開催しているのです。 そして、歌川広重の浮世絵を油絵の具で模写して研究しています。 その研究心には本当に脱帽です! ゴッホが弟のテオに「僕の絵は、ある意味でみんな日本の影響を受けているんだ」と手紙に書くほど傾倒していた理由は、主に次の3つのポイントにあります。 当時の西洋絵画は、光と影のグラデーションを使って、いかに物体をリアルに立体らしく見せるか(陰影法)を重視していました。 西洋の伝統的な絵画では、主役が画面の真ん中にドーンと据えられるのが基本でした。 しかし、日本の浮世絵は全く違いました。 西洋絵画では、輪郭線は「現実の世界には存在しないもの」として、できるだけ境界線を周囲に馴染ませてぼかすのが上品とされていました。 ゴッホにとって日本は「理想の桃源郷」だった ゴッホがパリを離れて南仏のアルルへ移住したのも、「ここなら、僕が大好きな日本(浮世絵)のようなまばゆい光があるはずだ!」と思い込んだからと言われています。 もし浮世絵との出会いがなければ、私たちがよく知る「情熱の画家ゴッホ」のあのスタイルは生まれていなかったかもしれません。 そう考えると、日本の芸術が彼の背中を強力に後押ししたんだな、と嬉しくなりますよね。 ゴッホの黄色って、太陽みたいに熱い! 彼の不器用で、純粋すぎる生き様そのものも、多くの人を惹きつける魅力です。 画家として活動したのは亡くなるまでのわずか10年ほど。 生前はたった1枚しか絵が売れなかったと言われていますが、それでも彼は狂気と隣り合わせになりながら、手紙で弟のテオに熱く芸術論を語り、絵を描き続けました。 その孤独や葛藤が作品にこれ以上ない深みを与えています。 「絵を描くことは、私の体の中の骨が折れるような、激しい仕事だ」 精神的な苦悩と貧困、黄色い家、ゴーギャンとの奇妙な同居生活、耳を切り落とした事件、37歳での衝撃的な最期。 波乱万丈という言葉で表すことさえ陳腐に思えてしまう濃厚な人生だったと思います。 ■↑出典ウィキメディアコモンズ:ゴッホ「ドービニーの庭」(バーゼル美術館) いよいよ、ゴッホが遺した「猫の絵」の秘密に迫ります。 実はゴッホは、ひまわりやアイリスのような植物、それに人間や風景はたくさん描いたのですが、「猫の絵」はほとんど描いていません。 猫が大好きな人からすると「あのうねるようなタッチで猫を描いたら絶対に可愛いのに!」と思いますよね。 でも実は、ゴッホの人生最後の時期に描かれた超有名な絵に、1匹だけ「消された黒猫」のミステリーがあるんです。 ■↑出典ウィキメディアコモンズ:ゴッホ「ドービニーの庭」(ひろしま美術館) ゴッホが亡くなるわずか2週間前、フランスのオーヴェール=シュル=オワーズという町で、彼が深く尊敬していた画家ドービニーの家の庭を描きました。 これが『ドービニーの庭』という作品です。 実はこの絵、ほぼ同じ構図のものが2枚現存しているのですが、ここに面白い違いがあります。 (1枚目の画像) 画面の左下の芝生の上を、1匹の黒猫が横切る姿がはっきりと描かれています。 ゴッホが弟のテオに宛てた手紙にも「手前に黒い猫がいる」とスケッチ付きで書かれています。 (2枚目の画像) なんと、こちらの絵の左下には黒猫がいません。 長い間、「日本にある方は、ゴッホが猫を描く前に未完成のまま終わったのかな?」などと言われていました。 それが、近年の日本の科学調査(蛍光X線分析など)によって 驚きの事実が 分かりました。 なんと、ひろしま美術館の絵にも「最初は確かに黒猫が描かれていた」ようなのです! ですが、「後に上から絵の具を塗り重ねて消されていた」のです。 誰が消したのか? ゴッホ自身が気に入らなくて消したのか? 彼の死後に遺族や画商が「猫がいない方が売れる」と思って消したのか?
ゴッホの魅力3:対象への「狂気的なまでの愛と没頭」
—— ファン・ゴッホ
ゴッホの魅力4:「浮世絵(ジャポニスム)」から受けた影響


1. 色彩と平面表現
しかし、 ゴッホが目にした浮世絵(歌川広重や渓斎英泉など)には、そうした「影」がほとんどありません でした。
2. 常識破りの「大胆な構図とトリミング」
3. 形をビシッと引き締める「力強い輪郭線」
ゴッホの魅力5: 人間味あふれる劇的な人生

—— ファン・ゴッホ
【本題】フィンセント・ファン・ゴッホは「猫の絵」を遺したのか?

ゴッホ最晩年の名作『ドービニーの庭』と消えた黒猫

スイス・バーゼル美術館にある『ドービニーの庭』
日本の「ひろしま美術館」にある『ドービニーの庭』

しかし、さすがに誰が消したのかまではわからないのですね。もし、作者のゴッホ以外の誰かが消したのであれば、作者の気持ちになって見るとなんだかスッキリしません。
なぜゴッホは「猫の絵」を描かなかったのか?
ゴッホの生きた時代、パリの芸術家たちの間では、黒猫をモチーフにしたキャバレー「ル・シャ・ノワール(黒猫)」が大流行するなど、猫はアートの最先端のモチーフでした。
同居していたゴーギャンも猫の絵を残しています。
それなのにゴッホが猫をモチーフに選ばなかったのは、彼が 「動かないもの」や「じっとポーズをとってくれるもの」を好んで描いた からだと言われています。
ゴッホはとにかく不器用で、絵の具を猛スピードで厚塗りしていくスタイルだったと言われています。
気まぐれに動き回る猫は、当時の彼の激しいクリエイティビティのスピード感に追いつかない相手だったのかもしれません。
だからこそ、あの消された黒猫の存在がよりいっそう愛おしく、ミステリアスに感じられますよね。

ゴッホが描いた「猫の絵」
結論から言うと、油絵(完成した絵画)として残っているものは、先ほどの『ドービニーの庭』の黒猫が、ゴッホが描いた事実上唯一の猫と言われています。
ただ、油絵になる前の「スケッチ(素描)」や、他の画家の絵を真似して描いた「模写」のなかに、ほんの少しだけ猫が登場する貴重な隠れエピソードがいくつかあります。
1. デッサンに残された「お皿と猫」
ゴッホ美術館には、彼が画家としてのキャリアの初期(1885年頃)に描いた『手とお皿、そして猫(Hand with a Bowl, and a Cat)』という紙に黒チョークで描いた素描が残されています。
ここには、スープか何かを入れるお皿に添えられた手と一緒に、ひょっこりと小さな猫のようなシルエットがスケッチされています。日常のふとした光景を練習のためにメモしたもののようです。
2. ミレーの模写の中にいる猫
■↑出典ウィキメディアコモンズ:ゴッホ『夕べ(ミレーを模して』
■↑出典ウィキメディアコモンズ:フランソワ・ミレー『一日の4つの時間帯:夕方』
ゴッホは、自分が大尊敬していたフランスの画家ジャン=フランソワ・ミレーの絵を熱心に模写していました。
ミレーの作品に『一日の4つの時間帯:夕方』という、農家の人々が夜、ランプの明かりの下で作業をしている静かな絵があります。(上の画像です)
ゴッホがこれを模写した絵の中に、暖炉のそばで静かに座っている猫が描かされています。

補足:共同生活していたゴーギャンは猫の絵を描いていた!
ゴッホといえば、南仏アルルの「黄色い家」で画家ポール・ゴーギャンとわずか2ヶ月だけ共同生活を送ったエピソードが有名ですよね。
実は、ゴッホが猫を描かなかった一方で、同居人のゴーギャンは猫を描いていました。
近年、ゴーギャンがその黄色い家での共同生活時代に描いた『小さな猫(The Little Cat)』という可愛い子猫の絵(当時は大きな静物画の一部だったと言われています)が100年ぶりに発見されて話題になりました。
しかも、その猫の絵はゴッホと共同生活をしていた時に描かれたということが、様々な検証により裏付けられているのです。
ゴッホの「黄色」とhideちゃんの「黄色」。どちらかを思い出すたびに、もう片方を思い出す。「黄色」はちょっと特別な色なんです。
■↓ゴッホとルイス・ウェインは、病気を患いながら描いていたという共通点がありますが、ルイス・ウェインは猫の絵を好んで描いていました。こちらもぜひご覧ください。
【極意】「猫の絵」をゴッホ風に描くための3つのコツ
彼がほとんど残さなかった「猫の絵」を、もしゴッホがキャンバスに向かって熱狂しながら描いていたら……。
そんな想像を膨らせて、 ゴッホの魂(エッセンス)を猫の絵に宿すための3つの極意 をまとめました。
アクリル絵の具なら、ゴッホのような力強い表現がバッチリ再現できますよ!
ゴッホが猫を描かなかったのなら、私たちが彼の情熱を借りて描けばいいのです。 アクリル絵の具を使えば、ゴッホのような力強い表現を誰でも楽しむことができます。 まず大切なのは「補色」の活用です。 黄色い毛並みに対して青い影を入れるだけで、驚くほど画面が鮮やかになります。 現実の猫の毛色にとらわれず、ゴッホの代名詞である「黄色」と「青」の組み合わせで画面を構築します。 例えば、キジ模様の部分を「燃えるような黄土色やオレンジのタッチ」で描くなら、背景や影、あるいは白い毛の部分にあえて「深い青や水色、紫のタッチ」をカツカツと重ねていきます。
極意1:「黄色と青」の補色対比で、光をドラマチックに発光させる
極意2:絵の具を厚く盛り、毛並みを「うねるタッチ」で刻む
綺麗に馴染ませるのではなく、硬めの筆に絵の具をたっぷりと取り、キャンバスに「置いていく」ように塗ります。
次に、モデリングペーストを使った「インパスト(厚塗り)」です。
絵の具を盛り上げることで、画面に立体感と力強いエネルギーが宿ります。
モデリングペースト(盛上げ剤)などでしっかり凹凸を出しながら、猫の体の丸みや毛の流れに沿って、短く力強い線をリズミカルに並べていくのがポイントです。
背中や尻尾は『星月夜』の空のように、大げさにうねらせると一気に魂が宿ります。
極意3:最後は「太く力強い輪郭線」で存在感を閉じ込める
ゴッホは日本の浮世絵に深く影響を受けていたため、形をハッキリとした線で囲む特徴があります。
厚塗りのタッチで描き進めたあと、仕上げに猫の輪郭や目元を、濃い青や黒、茶色などの太い線で迷いなくグッと引き締めます。
これによって、荒々しい絵の具のエネルギーの中に、猫としての強い存在感とモダンな美しさがビシッと立ち上ります。
この3つを意識するだけで、キャンバスの上が一気に「ゴッホの情熱の世界」に変わるはずです。 愛らしい猫の温もりをこの3つの極意に込めたら……と想像するだけで、すごくエネルギーのある素敵な作品になりそうです!
【実践】「猫の絵」をゴッホ風に描く簡単3ステップ
アクリル絵の具で描く、実践的な「猫の絵をゴッホ風に描く簡単3ステップ」をご紹介します。
先ほどの極意を実際の行程に落とし込んで、初心者でも取り組みやすい流れにしました。

ゴッホ風「猫の絵」を描くため必須アイテム
アクリル絵の具
特に黄色・オレンジ・深い青・紫・白・黒(または濃い濃紺)は必須。
筆
硬めの筆(豚毛など)がタッチを出しやすい。平筆や丸筆。
ペインティングナイフ
激しいタッチを作ることができます。絵の具の混色でも活躍。
キャンバス
絵の具をたくさん乗せるのでキャンバスかキャンバスボードを使用します。
モデリングペースト
盛り上げ材。ゴッホ風タッチを簡単に出すことが出来ます。
ジェルメディウム
筆跡を残したり、テクスチャを付けることができます。
ペーパーパレット
アクリル絵の具はすぐに乾燥するので紙製パレットがおススメです。
水入れ

●リキッテクスプライム
●リキテックスレギュラー
●アムステルダム
バニーコルアート :鮮やかな発色とリキテックスの多様な質感が魅力。
ターレンスジャパン :アムステルダムなど、大作にも挑めるコスパと品質。
ステップ1:「色彩」と「うねり」を意識したダイナミックな背景の厚塗り
- 使う色をパレットに出します。それぞれに同量の「ジェルメディウム」を混ぜておきます。
青色系 紫 ディオキサイジンパープル 濃い青 プルシャンブルーヒュー 青 フタロシアニンブルー 薄い青 フタロシアニンブルー:チタニウムホワイト=1:1 水色 フタロシアニンブルー:チタニウムホワイト=1:2 黄色系 明るい黄色 カドミウムイエローライト オレンジよりの黄色 カドミウムイエローライト:カドミウムオレンジ=1:1 黄色っぽい茶色 カドミウムイエローライト:イエローオキサオド=1:3 - あらかじめ紫をキャンバスに二度塗りしておきます。(ここにはメディウムを混ぜません)
- 下塗りが乾燥したら、背景から「厚塗り」を体験します。猫を描く前に、背景にゴッホのエネルギーを仕込みます。

- 硬めの筆に濃い青をたっぷりと取り、キャンバスに「置く」ようにガツガツと塗ります。筆の跡(インパスト)がそのまま残るように、短い線を並べて「背景の渦」を作ります。これが後の猫の存在感を引き立てます。青、薄い青、水色でも同様に塗っていきます。
- 光を入れたいところに黄色を置いていき、オレンジや白もランダムに置いてみます。
- 猫を「大きなうねり」の塊として捉えて、『星月夜』の渦巻きのよう、大きな曲線で下描きをします。浮世絵にあるようなモチーフを見切れるくらい手前にする手法を取り入れました。
ステップ2:補色対比を極める!現実無視の「黄色と青」の毛並み
猫の色を、感情と光の色で再構築 します。
- 白を混ぜた黄色、オレンジ、青、水色にモデリングペーストを混ぜておきます。
- 猫の部分にペインティングナイフで絵の具を盛りつけます。その上を硬い筆でならすように筆跡をつけていきます。
- 同様にペインティングナイフを使って、背景のうねりや木のタッチなどを描きこみます。
- 猫に、オレンジ、青、水色などを使用して、ゴッホのタッチ(短めの線)を重ねていきます。毛の流れに沿って、パレットから取った絵の具を馴染ませずに並べます。
ステップ3:最後は「太い輪郭線」で生命力を閉じ込める
仕上げに、 ゴッホが日本のアート(浮世絵)から学んだ、形をはっきりさせる技法 を取り入れます。
- 濃い色で「グッ」と囲む: 画面全体が厚塗りのタッチで埋まったら、濃い青、または黒(あるいは濃い濃紺)を筆に取り、猫の輪郭を力強く囲みます。
- 意志を宿す: 猫の目元や耳の形も、この太い線でビシッと引き締めます。
歪んだタッチや鮮烈な色の中に、猫としての強い存在感が生まれ、モダンアートのような力強さが完成します。

【Q & A】猫の絵とゴッホに関する謎や描き方についての質問

Q:ゴッホの『ドービニーの庭』は、どこで観ることができますか?
A:『ドービニーの庭』は、現在世界に3枚(ほぼ同じ構図の油絵が2枚と、下絵とされるものが1枚)存在しており、そのうちのなんと1枚が日本の美術館にあります!
それぞれの所蔵場所をまとめました。
1. ひろしま美術館(日本・広島県)
今回話題に出た、「黒猫が後から塗りつぶされて消されていた」方の作品です。
日本国内にあるため、旅の計画を立てれば本物を観に行くことができます。
ゴッホが命を削って描いた最晩年の筆跡や、猫が消された左下の厚塗りの質感を、ぜひ間近でじっくり観察してみてください。
『ドービニーの庭』は、ひろしま美術館の常設コレクション(近代西洋絵画)の目玉の一つですが、時折、他の美術館の「ゴッホ展」などの特別展に貸し出されて全国を巡回することもあります。
もし広島へお出かけの際は、事前に美術館の公式ホームページなどで展示状況をチェックしてから足を運んでみてくださいね。
2. バーゼル美術館(スイス)
こちらは「画面の左下に黒猫がはっきりと描かれている」方の作品です。
ゴッホが思い描いたオリジナルの構図そのままの姿を観ることができます。
スイスを訪れる機会があれば、ぜひ!
3. ゴッホ美術館(オランダ・アムステルダム)
油絵として完成させる前に、ゴッホが全体の配置を計画するために描いたとされる「黒チョークによる下絵(素描)」が所蔵されています。
ゴッホ作品の世界最大のコレクションを誇る美術館です。
横長の2枚(ひろしま美術館・バーゼル美術館)が庭全体を見渡すような構図なのに対して、オランダのアムステルダムにあるゴッホ美術館に所蔵されている油絵は、庭の一部をクローズアップした正方形に近い構図(約51cm × 51cm)で描かれています。
この作品には、ゴッホならではの面白いエピソードが隠されています。
当時、オーヴェール=シュル=オワーズに到着したばかりのゴッホは、手元にちゃんとしたキャンバスを持ち合わせていませんでした。
でも、どうしてもすぐにその庭を描きたくて我慢できなかった彼は、なんと赤と白のストライプ柄の「キッチン用のふきん」をキャンバス代わりにしてこの絵を描いたのです。
Q:ゴッホ風猫の絵にしたくて絵の具を厚塗りしたら割れてしまったのですが?
A:完全に乾ききるまで待ってから、ひび割れを絵の具で埋めましょう。
アクリル絵の具は、乾燥すると水分が抜けて体積がキュッと縮む性質(収縮)があります。
そのため、チューブから出した絵の具を一気にドカンと厚塗りしすぎると、表面だけが先に乾いて中が乾ききらず、引っ張られてひび割れ(クラッキング)を起こしてしまいます。
割れてしまったときの対処法
- 完全に乾ききるまで待つ:まずは、ひび割れの中の絵の具まで完全にカチカチに乾くまで数日待ちます。
- ひび割れを絵の具で「埋める」:割れた隙間を埋めるように、上からもう一度絵の具を筆で優しく塗り重ねます。ゴッホ風のタッチなら、その上からの重ね塗りすらも「新しい質感(タッチ)」として作品に馴染ませることができます。
次回からの予防策
- 「モデリングペースト(盛上げ剤)」を混ぜる:アクリルでゴッホ風のザラザラ・もこもこした厚塗りをするなら、これが一番の特効薬です!絵の具にモデリングペーストを混ぜてから塗ると、乾燥しても縮みにくくなり、どれだけ厚く盛ってもほとんど割れなくなります。
- 一気に盛らずに「何層も重ねる」:少し面倒に感じるかもしれませんが、「1層目が乾いたら2層目を盛る」というように、数回に分けて厚みを出していくと絶対に割れません。

■↓使えるメディウム8種類を紹介しています。画像入りで詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
Q:ゴッホは病気だったというのは本当ですか?
A:はい、ゴッホは人生の後半、特に晩年の数年間、非常に重い精神的・身体的な病気や症状に苦しんでいました。
彼がどのような病気であったかについては、当時の主治医の診断だけでなく、現代の医学界でも彼が残した膨大な手紙や行動の記録をもとに、さまざまなアプローチから研究が続けられています。
彼を苦しめた主な病名や説には、以下のようなものがあります。
1. 当時の診断と「てんかん」説
ゴッホが南仏アルルで自ら耳を切り落とし事件を起こしたあと、彼は精神病院(サン=レミの療養院)に入院しました。
当時の医師たちが出した有力な診断が「てんかん(意識障害や激しい発作を伴う脳の病気)」でした
ゴッホ自身も手紙の中で「発作」という言葉を何度も使っており、発作が起きている間の記憶がすっぽり抜け落ちてしまうことに強い恐怖を感じていました。
2. 現代で有力視される「双極性障害(躁うつ病)」
現代の精神医学では、彼は「双極性障害」であったという説がとても有力です。
躁(そう)状態: 寝食を忘れて異常なハイテンションで猛スピードで絵を描き続ける(1日に何枚も狂ったように描き上げる時期がありました)。
うつ状態: 激しい自己嫌悪と孤独感に苛まれ、ベッドから起き上がれず、一切の手紙や筆を置いてしまう。
この極端な感情の波が交互に彼を襲い、次第に心身を蝕んでいったと考えられています。
3. お酒や栄養失調による精神への影響
前にも少しお話しした、当時彼が溺愛していた強いお酒「アブサン」の大量摂取による中毒症状(アルコール依存症)も、彼の精神的不安定さを急激に悪化させました。
ゴッホは絵の具代にお金を注ぎ込むあまり、まともな食事をとらずにコーヒーとタバコ、お酒だけで何日も過ごすような過酷な生活を送っていたため、深刻な栄養失調も重なって幻覚や妄想を引き起こしていたとも言われています。

【まとめ】ゴッホの情熱を借りて、あなただけの猫の絵を描こう
ゴッホは「猫の絵」を描いたのか?
という視点から、ゴッホの魅力、猫の絵の秘密について、猫の絵をゴッホ風に描く極意、その極意を踏まえて猫の絵を描くステップを紹介しました。
書いても書いても、まだまだ書き足りないほど、ゴッホの魅力は語りつくせません。
ならば、 ゴッホの技法をまねて、彼の情熱を筆を通して感じてみてはいかがでしょう 。
ゴッホの絵に猫はいなかったかもしれません。
しかし、彼の残した情熱的な技法は、今の私たちに「描く喜び」を教えてくれます。
- ゴッホの魅力について:うねる筆致、補色対比、圧倒的な没頭とジャポニスムの影響。
- ゴッホは猫の絵を遺したのか:唯一の油絵猫は『ドービニーの庭』の「消された黒猫」。
- 猫の絵をゴッホ風に描く極意3つ:厚塗りのうねるタッチ、黄色と青の補色、太い輪郭線。
- 猫の絵をゴッホ風に描く3ステップ:ダイナミックな下描き、現実無視の配色、輪郭線での引き締め。
厚塗りの感触や鮮やかな色の重なりを楽しんでみてください。
きっと、あなたの愛猫が、キャンバスの上で新しい生命を宿して輝き出すはずです。
絵は「描く」という行為そのものが「癒しの力」を持っています。「私は常に描き続けることで自分自身を癒してきた」
—— ファン・ゴッホ

このブログでは、アクリル絵の具と猫の絵に関することをやさしく簡単に紹介しています。
また、YouTubeではわかりやすく動画でご覧いただけるように工夫しています。
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